明治創業の上野洋食「ぽん多本家」は美味しいトンカツ、タンシチュー、エビフライ、ポークソテーで有名です。
その老舗の4代目島田良彦さんは高校を卒業後山のホテルに入社、3年間修業をしたのち「ぽん多本家」の厨房に立ちました。
以来、老舗の味と伝統を守り続けていらっしゃいます。
池波正太郎や白洲次郎など多くの文化人が愛した味といわれる「ぽん多本家」。
多くの人が長年の常連さんで、また著名な料理人もこぞって食べに行くという「ぽん多本家」さんの店内は、とんかつ屋さんというかんじではなく、もっとしゃれた和食店、という雰囲気です。
カツレツの味
私もこの「ぽん多本家」のカツレツをいただいたことがありますが、本当に美味しかったです!
いわゆる豚のヒレの部分を使っていているのかと思いきや、ロースだそうです。
バラ先を落として芯の部分の良い部位を使うので肉が美味しい!と思える良いお肉を使っているという印象でした。
見た目は白っぽく?揚がっていてでもサクッとした歯触り。
温度が家庭とは違うのかなあ・・・?と思いながらも、答えは出ぬままパクパクといただきました。
あれから、あちこちのヒレカツをいただくことがありますが、「ぽん多本家」さんを超えるお店にまだ巡り合えません!
島田シェフが「カツはくどいものじゃない。あっさりしたものなんです。」とおっしゃいますが、まさにそのようなお味です。
その「ぽん多本家」の島田良彦 さんが家で作れるひとくちカツのレシピを公開されていますので、ご紹介しますね。
島田良彦シェフの家で作れるひとくちカツレシピ
<材料>1人分
豚ロース肉 約200g 小麦粉 適量 生パン粉 適量 卵 3個 サラダ油 適量 塩 適量 コショウ 適量 しょうゆ 適量 キャベツ およそ1/8個 <作り方>
- 豚ロース肉を脂身と赤身に切り分ける。
- 包丁で豚肉の端に切れ目を入れ、肉はたきで叩き、繊維をほぐす。
- 塩・コショウを振りかけ、一口サイズに切る。
- 小麦粉と卵を絡ませ、パン粉をつける。
- フライパンに油を注ぎ、中火にする。火加減を見て、4を入れる。
- 2分くらいそのまま、泡の量や衣の色を見て、しばらく揚げる。
- 泡が小さく(1cmくらい)なったら油から取り出す。
ポイント
1.小麦粉はまんべんなくつけることで、卵とパン粉が全体に絡む。ひとくちサイズなので薄衣にすると、お肉と衣のバランスが保たれる。
2.パン粉を落としてゆっくり浮かんでくるのを見計らい(140℃)、カツを入れる。油の量は、カツが半分ほど表面から浮き出る程度を目安に。
(ちなみに島田シェフのお店では120℃の油で15分かけてカツレツを上げるそうです。
そうすることによって豚本来の甘みが出るそうです。)
3.火加減は変えない。無理に温度を上げると焦げる可能性も。
付け合わせの脂身焼き(バラさき)の作り方
1、切り分けた豚ロース肉の脂身を厚さ1cm程度に切っていく。
2、フライパンに油をしかずに火をつけすぐに1を入れ、弱火で焦がさないように焼く。
(ポイント)
脂身から油が出てくるので、キッチンペーパーでふき取りながらじっくり焼いていく。
3、火を止めて、フライパンから取り出す直前にしょうゆを小さじ1入れ、味をととのえる。「キャベツの千切り」の作り方
- キャベツの芯を取り除く。
- 一枚一枚丁寧にはがす。
- 1枚についた芯を包丁で切り外し、葉脈を同じ方向にそろえて巻く。
繊維に対して垂直に切る。風味や甘みが損なわれず、触感が統一される。- 「3」を千切りしていく
作ってみての感想
このレシピで私も実際に作ってみました。
その感想ですが
①温度が低いわ、と思いました。
今まで私は揚げ物は温度が高くなければカラリとしないという先入観があって180度くらいで揚げていましたが島田良彦シェフのレシピは140度、ということです。
低い温度でもカラリと揚げられる、と知りました。
②油の量がすくなくてOK。
最近は揚げ物は油の量を少なくして揚げる、というのが主流ですが、カツもそれでOKなのだということがわかりました。
③脂身、落として良いのね!
これは個人的好みなのですが、豚の脂身が今一つ好きになれず、いつも豚の脂身は切り落としていたのですが、これってやっていいのかあ・・、と疑問に思っていました。
でも島田シェフがそうされているのなら、OKですね。
④ポイントを押さえて作ると衣がはがれにくい!
トンカツを作って食べているときの衣がはがれてしまうとがっかりしますが、島田シェフの教え通りに作ると衣がはがれにくく、とてもおいしくできました。
我が家はこの作り方をトンカツの定番にしようと思います。
お店の情報
お近くにお住まいの方、上野方面に用事があっていかれる方、是非いらしてみてください。
お店の情報は次のとおりです。
ぽん多本家
東京都台東区上野3-23-3
☎ 03-3831-2351
11:00~14:00 16:30~20:00
月曜休
JR御徒町駅より徒歩3分
島田良彦シェフ
1965年生まれ。
明治創業の老舗「ぽん多本家」の4代目。
「高校3年生までに将来を決めなさい」と父親に言われ家業を継ぐことにしました。
山のホテルで3年間修業のち「ぽん多本家」へ。
老舗の味と伝統を守り続けていらっしゃいます。
余裕は、いらない
島田シェフには「余裕は、いらない」という信念があります。
毎回毎回どうやって美味しく作るか、勝負しているそうです。
これでいいのか、これでいいのか、と思いながら毎日作っている、
そうすることが「味」につながると思っているそうです。
カツレツの油も自家製
カツレツを上げる油も自家製で作られます。
豚肉の脂身を落としたラードから作るそうです。
驚くべきは、作った油をお玉ですくって島田シェフは飲んで味をみることです!
しかし、その味は島田シェフおひとりしかわからないそうです。
油、飲めませんよね、普通・・・。
まるで出汁を味みするように油の味を見ていらっしゃいました。
揚げ油でカツレツの味が決まるとかで、豚肉だけでなく油にも大変な意識を注いでいます。
父親との約束
島田シェフは小学生の頃から職人はいいなあと思っていたそうです。
そして修業を終えて「ぽん多本家」の厨房に入ったとき父親は「見て覚えなさい」といい、すぐには手ほどきをしてくれませんでした。
必死に父を見て仕事をしているとある時父親が島田シェフに後を任せ、厨房からいなくなりました。
まだ若き島田シェフは、その後はお客様を前に必死に料理をしました。
老舗の味に傷をつけてはいけない!と。
そしてその日以降、父親は島田シェフに料理を教えてくれるようになったそうです。
そして島田シェフ32歳の時に、お父様から一人でやっていけるか、と覚悟を問われました。
「任せてください。最後までやりきります。」という言葉がお父様と交わした最後の言葉でした。
島田シェフとお父様との約束となったのです。
しかし、お父様が虹の橋を渡られたあと、常連のお客様が一人、また一人と減っていきました。
そんなか、島田シェフを認め応援してくれるお客様もいました。
「あなたの料理は本当に美味しい」と言ってくれたお客様の言葉を糧に、父親と同じには成れないけれど自分の料理を作ろうと決意しました。
そうして年月を重ね、今は遠方から島田さんの味を目当てにお客様がやってきます。
島田シェフは今、目の前のことをコツコツ、ただやり遂げようとする毎日です。
職人気質、といえばそうなのですが、知的で優し気で、職人としての強さを内に秘めてとてもかっこいい!島田シェフです。
あ~、「ぽん多本家」のトンカツ食べたい!
あ、でも次はタンシチューにしようかしら!