自宅パン教室を開講するために資格は必要か
自宅でパン教室を開講を希望される方は、必要となる資格はあるのか、ということがまず心配になるかと思います。が、これに関しては公的資格は不要です。
ではどのようなルートで自宅でパン教室を開く方法があるのか、ですが大きく3つの道があると思います。
① 大手パン教室で学びその団体に所属して講師の資格を取り、認定校として自宅で開講する方法
② 様々なパン教室で学び、組織には所属せず、フリーランスとして活動する方法
③ パン職人であった人がフリーランスで活動する場合
③についてはかなりまれなケースなので、ここでは除くとして、①②のケースについて考えたいと思います。
大手スクールの認定校としてパン教室を開講する場合
今はフリーランスのパンのインストラクターが増えましたが、20年くらい前はほとんどがこのパターンだったのではないでしょうか。
実はわたくしも複数のスクールの講師免許を持っています。そしてその後、ル・コルドンブルーのパン本科に進みました。今はル・コルドンブルー卒、という立ち位置でフリーランスとして自宅パン教室を開いています。
従って認定校として活動する場合も、フリーランスとして活動する場合も双方を経験し、それぞれのメリット、デメリットを感じました。
大手パン教室の認定校としてパン教室を開講する場合のメリットは
・レシピの開発は本部がしてくれるので、講師はそのレシピに従ってレッスンをすればよい。自分でレシピを開発しなくて良い、ということで、かなり楽ができる。
・組織だっているので材料を市場価格よりも安く入荷できる。非常に良質な材料を使える、という安心感もある。
・本部から生徒さんを紹介してもらえる場合もある。習いたい希望があるが本校に通えない方が、近くに認定校がある場合そこはどうでしょうか、本部が希望者に教えてくれる。
・○○クッキング、○○スクールの認定校です、という確固たる肩書があり信用に通じる。
・自分が講師を排出できるようになると、その講師を教えるレッスン料金も高く、自分が教えるとなると、辞めずに教室に通い続けてくれる。講師を多く育てることが教室を大きくする近道、と言われる。
ではデメリットはどうでしょうか。
・認定校、という制約がある。レシピのここを変えたい、と思ってもレシピの変更は許されない。また、レッスン料金も決まっていて、自分の自由にはできない。
・どこの認定校でも同じレシピを使っているので、独自性を出しにくい。独自性を出すのであれば、レシピや製法とは違うとことで工夫する必要がある
・年会費や上納金を納めなければならない
・研修、という名目でレッスンに通い続ける必要がある
・テキストを購入しなければならない
・認定試験を受けなければならない
・講師になるために費やしたお金はかなりの金額になる
フリーランスで自宅パン教室を開講する場合
インターネットでパン教室を検索してみると、フリーランスの方が随分多いように思います。ではそのメリットを考えてみると
・制約を課されないので、レッスン料金、レシピなどすべて自分の自由に決めることができる
・自分のオリジナリティを出しやすい
・年会費や上納金を納める必要がない
半面デメリットもあります
・レシピの開発を自分でしなければならない。毎月新しいレシピを自力で開発するのは相当大変なことである。一回の試作で終わることは珍しく、2回3回とレシピの精度を上げながら試作を重ねなければならない。フリーランスになる、ということはこのハードルを越える覚悟と実力が必要である。
・材料を製菓材料店やインターネットで購入しなければならない。それが質のよいものかどうか、使ってみないとわからない危うさもある。
・大手スクールのメームバリューの後ろ盾がなくなる
このように見るとメリットデメリットは当然有り、自分がどちらを選ぶか、ということにかかってきます。
私のケースは・・・
私のパンの学びの歴史
最初、某組織でパンの基礎を学びました。そこは非常にしっかりと教えてくださるところで、パン作りの基本を身に付けることができました。そこでは独自開発の小麦を使ってパンを作ります。
その後、平行して別の組織の個人教室に通いました。こちらは個人教室の割に生徒の人数が多く、気が付くと自分は触らないまま完成するパンもありました。けれど、本当に美味しいレシピが多く、毎回美味しさに感動しながら食べていました。そこでも独自開発の小麦を使ってパンを作ります。
実は後発の教室は一回きりの体験で終わりにするつもりだったのですが、パンが非常に美味しいこと、そしてお菓子も一緒に教えてくれる、ということが分かりその日のうちに入会をしたのです。
そうこうしているうちに世の中に天然酵母のパンが流行り出し、天然酵母のパンも習う必要がでてきました。これは多数のフリーランスの個人のパン教室に通って習いました。
また、なぜか大手スクールはソフト系のパンには強いのですが、ハード系のパンはあまり良いレシピが無いように思いました。
そこで私は本格的ハード系のパンを習うため、フランスの料理学校「ル・コルドンブルーの日本校」へ通うようになりました。
講師として
20数年以上も前のことですが、初めは認定校として安心して講師業につくことができました。
年数を重ね段々と実力をつけてくると、このレシピのここはやりにくい、とかまた型を買わなければならない、とか少しづつ違和感が出てきました。
ル・コルドンブルーに通いだしたのはそんなころでした。目的はハード系のパンを学ぶことに有りましたが、ル・コルドンブルーはフランスの学校なので、結果的に様々な制約は無く自由に活動することができます。また、ルコルドンブルー卒、という言葉はかなりの「箔が付く」ので周りの評価もがらっと変わりました。
今は、フリーランスとして自宅パン教室を開いています。
では、日本の大手スクールに通わず、最初からル・コルドンブルーに行けばよかったのかというとそれは違います。やはり日本人が好むパンとフランス人が好むパンは違うのです。その日本人が好むパンを教えてくれるのは日本のパン教室です。
ル・コルドンブルー一校でフリーランスになっていたら遅かれ早かれ、レシピの開発に行き詰まったのは間違いありません。
以上が私の経験ですが、これから講師になる方、そして今の状態に悩んでいらっしゃる方に少しでもヒントになれば幸いです。